日本において、富山ほど海と深く結びつき、その恩恵を授かっている場所は他に類を見ません。透明度を誇る清らかな水と、驚くほど多様な海の幸で知られるこの地域は、寿司や刺身を愛してやまない人々にとってまさに楽園です。
先日の富山への旅では、旬の恵みを心ゆくまで堪能するとともに、夜明け前の深い闇の中で行われるホタルイカ漁という、一生忘れられない幻想的な光景に出会うことができました。
旅の始まりは、富山湾の新鮮な地物でもてなしてくれる正統派の江戸前寿司店「あゆみ寿司本家」から。なかでも、芳醇な味わいののどぐろや、旬のホタルイカ、そして肝を添えたカワハギは格別の一皿でした。

情緒あふれる港町・岩瀬を散策する
美食を満喫した後は、伝統的な木造建築や古い蔵が立ち並ぶ、風情豊かな港町・岩瀬地区へと足を延ばしました。京都の祇園を、より静謐に、さらに海の気配を漂わせたかのようなこの街並みは、穏やかな午後のひとときを散策するのにこれ以上ない場所です。
散策の途中、この地域で初となる本格的な寿司職人育成スクールとして産声を上げたばかりの「北陸寿司アカデミー」に立ち寄り、その後、江戸時代後期に栄えた富商の暮らしを今に伝える「旧馬場家住宅」を見学。当時の船主たちの圧倒的な富と歴史の息吹に触れました。
この地区が誇るもう一つの歴史的建造物が、1893年創業の由緒ある日本酒蔵「桝田酒造店」です。吟醸酒のパイオニアとして名高い銘酒「満寿泉」を醸すこの蔵で、15分間の日本酒テイスティングを体験しました。
わずか1,500円で、冷蔵庫にずらりと並ぶ多彩な銘柄を試飲することができます。一杯ごとの繊細な味わいをじっくりと堪能できるよう、一人8杯までに制限されているのも心憎い演出です。軽やかなフルーティーさと、すっきりとしたキレのある後味が印象的な「満寿泉スペシャル」をはじめ、いくつかの洗練された味わいを楽しみました。

富山の夜に、レトロな温もりに浸る
岩瀬を後にし、次に向かったのは富山市中心部。世界的建築家である隈研吾氏が設計を手掛けた複合文化施設「Toyama キラリ」を訪れました。ガラス美術館や立派な図書館、銀行、ショップなどが融合した空間です。
立山連峰をモチーフにしたというガラスとアルミの精悍な外観もさることながら、内部の木をふんだんに使用した温もりあるデザインは、それ以上に深く感銘を覚えるものでした。しかし、ここでの滞在はごく短いものとなりました。なぜなら、極上の寿司を味わえるレトロなスナック「雅」の予約時間が迫っていたからです。
ほの暗い照明に、どこか懐かしいインテリア、そして1980年代のポスターに囲まれた「雅」のドアを開けると、まるでタイムカプセルに飛び込んだかのような錯覚を覚えます。まるで誰かのリビングルームに招かれたかのような親密な空間で、客たちは温かいママさんやスタッフとの会話を楽しみながら、思い思いに羽を伸ばしていました。そして、そこで供される本格的な寿司が、この店の唯一無二の魅力をさらに引き立てています。
極上の寿司と美酒を心ゆくまで堪能し、満ち足いた気分のまま、今宵の宿である「ホテルグランミラージュ」へ。このホテルの一番の自慢は、9階にあるスタイリッシュな天然温泉とサウナ施設です。そこからは、富山湾のたおやかな海原と、壮大な立山連峰の大パノラマを一望することができます。

ホタルイカが放つ、神秘の輝きを追い求めて
しかし、ゆっくりと旅の疲れを癒やす時間はそう長くはありませんでした。なぜなら、深夜2時出発のホタルイカ漁見学ツアーのためにアラームをセットしていたからです。富山の美食と歴史を満喫した一日の終わりに、熟練の漁師たちとともに静寂に包まれた広大な夜の海へと漕ぎ出すのは、どこか夢の中の出来事のようでもありました。
滑川港を出港し、私たちは特等席から漁師たちの見事な手さばきを見つめていました。仕掛けられた網が引き揚げられると、そこには何千匹もの小さなホタルイカが。それらが一斉に放つ、鮮烈で妖艶な青白い光。その光景は、大自然が織りなす最も神秘的な生物発光のショーであり、言葉を失うほどの美しさでした。
船上での興奮に満ちた約3時間の航海を終えて滑川港に戻ると、船上で言葉を交わした漁師たちとともに特別な朝食を囲む時間が待っていました。食卓に並んだのは、贅沢な刺身と、これ以上ないほど新鮮な、富山弁で言うところの「キトキト」な、ホタルイカの数々。
早朝からの特別な体験を終えた後は、心地よい疲労感を抱きながらホテルグランミラージュへと戻り、待ちに待った温泉の湯船に身を委ねました。そしてこの旅の締めくくりとして、美しい刺身が敷き詰められた特製弁当を堪能し、黒部漁業協同組合が運営する人気の鮮魚市場「魚の駅生地」で旅の思い出にお土産を選びました。

旅の終わりに想うこと
東京へと向かう北陸新幹線の車中、岩瀬地区での穏やかな散策や、スナック「雅」で過ごした小粋な夜など、旅の情景が次々と脳裏に浮かんでは消えていきました。しかし、何よりも私の心に深く刻み込まれたのは、あの未明の海で出会ったホタルイカの輝きです。
富山湾の漆黒の海原で、幽玄な青い光が揺らめき、きらめく様を見るのは、現実離れしていながらも、自然への畏敬の念を抱かせる体験でした。獲れたての海の幸に舌鼓を打った朝食の記憶とともに、それは美食と伝統、そして豊かな海に彩られたこの旅の中で、最も鮮烈で、愛おしい瞬間として輝き続けています。
この記事は、Matthew Hernonによる英語の原文を翻訳・編集したものです。