この記事は、Tokyo Weekender 2025年 第1号に掲載されたものです。
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大分空港から車を走らせること約1時間。のどかな田園風景や小さな集落をいくつも通り過ぎ、景色が少しずつ都会の彩りを見せ始めた頃。コンクリートの建物や整然とした街路樹の合間に、ふと不思議な看板が目に飛び込んできました。

「豊後高田 昭和の町」。

少し色あせた白とオレンジ色のその看板は、そこが私にとって今年一番のお気に入りスポットになることを予感させる、静かで控えめな入り口でした。

仕事の都合で豊後高田市に滞在していた私は、近くのビジネスホテルを拠点にしていました。夕暮れ時、夕食を求めて外へ踏み出すと、通りのどこからかかすかなカラオケの歌声が聞こえてきます。

丸みを帯びた昭和レトロな街灯が照らし出す町並みを歩いていると、夜の散歩を楽しむ多くの人々とすれ違いました。そこはまるで、現代から切り離されたパラレルワールドのよう。「もしかして、タイムスリップしてしまったのだろうか?」――そんな錯覚に陥るほど、そこには濃密な「あの頃」の空気が流れていました。

昭和の町の起源

「昭和の町」という名は、日本の歴史において最も激動かつ象徴的だった昭和時代(1926年〜1989年)に由来しています。

この63年間で、日本はめまぐるしい変遷を遂げました。軍国主義の台頭に揺れた初期、敗戦を経てアメリカ文化が濁流のように流れ込んだ中期。ロックンロールが響き渡り、和服が洋服へ、食卓には洋食が並ぶ……生活様式が劇的に塗り替えられていきました。そして後期、日本は驚異的な経済成長を遂げ、世界をリードする経済大国へと駆け上がります。その終焉は、1980年代後半の「バブル経済」という、狂乱とも言える華やかな時代と重なっています。

ひと口に「昭和」と言っても、50〜60年代のレトロフューチャーな魅力から、80年代のマキシマリズム(過剰な装飾美)まで、そのスタイルは多岐にわたります。しかし、今私たちが「昭和レトロ」と聞いて思い浮かべるのは、主に50年代から70年代にかけての、どこか温かく懐かしい空気感ではないでしょうか。

豊後高田の「昭和の町」は、約500メートルの間に3つのメインストリートが交差しています。それぞれの店先に溢れているのは、豊後高田が海上交通の要所として栄え、商店街が最も輝いていた1950年代から60年代の熱気です。

かつては人々の活気で溢れたこの場所も、車社会への移行とともに人々は郊外へ移り、大型店も姿を消していきました。1990年代を迎える頃には、かつての賑わいは嘘のように消え、町は「忘れ去られた場所」になろうとしていたのです。

昭和の精神で再生された街

しかし、豊後高田市はただ手をこまねいていたわけではありません。2001年、街の誇りを取り戻すためのユニークな再生プロジェクトが始動しました。

大分県の多くの自治体が「城下町」や「武士の遺構」といった江戸時代の歴史を観光の目玉にする中で、この町が選んだのは全く異なるアプローチでした。あえて「昭和」に光を当て、当時から続く7つの店舗を「昭和の町認定店」に指定。それらを、守るべき大切な文化遺産として認めたのです。

2026年現在、認定店は当初の7店舗から51店舗にまで拡大しました。軒を連ねるのは、食品から玩具、生活雑貨まで多種多様な店々。町の中には昭和の暮らしを物語る品々を展示した2つの博物館があり、当時の教室を完全に再現したスペースも人気を集めています。

また、ある電気店では、最新の薄型テレビの隣に、現役さながらのレコードプレーヤーやラジカセが並ぶといった、新旧が共存する不思議な光景に出会えます。日曜日や祝日には、1950年代の車両を修理した本物の「ボンネットバス」が走り、エンジン音とともに町を彩ります。

食の楽しみも尽きません。土産物店からレストランまで、パッケージのデザイン一つひとつ、あるいは店先に並ぶ食品サンプルに至るまで、徹底して昭和のエッセンスが守られています。もちろん、子供たちの社交場だった駄菓子屋も健在。今ではなかなかお目にかかれない懐かしのお菓子が、所狭しと並んでいます。

町を歩けば、クラシックな自動販売機や球形の街灯、さらには1962年当時の価格でガソリンや灯油、軽油を宣伝する看板が添えられた、昭和スタイルのポータブル給油機などが次々と目に飛び込んできます。

「昭和の町」のリアリティは徹底されており、映画やドラマのロケ地としても高い人気を誇ります。時には撮影クルーが、あのヴィンテージなボンネットバスを走らせることもあるそうです。

橋を渡った先にある「玉津(たまつ)プラチナ通り」でも、レトロなテーマは続きます。地面には遊び心あふれるトリックアートが描かれ、小さな迷路を進んだり、チェス盤のような道に並ぶ超リアルなチェスの駒の間を歩いたりと、散策を飽きさせません。

他にも、郷愁を誘う理髪店の窓越しに昭和の風景を覗いたり、70年前のパン屋の建物を活用した居心地の良い映画館で時間を忘れたり。さらには、地域の特産品である「豊後高田そば」を職人の手打ちで提供する店など、この町には五感で楽しめる魅力がぎゅっと詰まっています。


昭和の町や大分県のその他の観光スポットについての詳細は、大分県観光公式サイトをご覧ください。

この記事は、Kim Kahanによる英語の原文を翻訳したものです。