北に富士山がそびえ、南に駿河湾が広がる静岡市は、まさに山と海が出会う場所。ダイナミックな海岸線、神聖な松原、そして豊かな食文化で知られるこの街は、他の有名な観光地の影に隠れがちですが、実は知る人ぞ知る、たくさんの魅力に溢れています。

東京から新幹線でわずか1時間というアクセスの良さは、都会の喧騒から離れる週末旅行にぴったりです。世界文化遺産・三保松原や歴史ある静岡浅間神社といった有名な名所はもちろん、周辺の山々やビーチへもすぐそこ。自然と文化が心地よく調和するこの街で、心満たされる48時間を過ごしてみませんか?

1日目:午前

三保松原:松並木と富士の絶景

旅の始まりは、約3万本の松が生い茂る海岸線と富士山の眺望で名高い三保松原から。密集した松林、視界が開けた紺碧の海、そして遠くに浮かぶ日本一の山のコントラストは、まさに一幅の絵画のような美しさです。

富士山はその日の機嫌次第で雲や霞に隠れてしまうことも多いのですが、幸運にもこの日は空が澄み渡り、雪を冠した山頂が青空にくっきりと映える雄大な姿を拝むことができました。その圧倒的な存在感は、見る者に畏敬の念を抱かせ、自然への謙虚な気持ちを呼び起こしてくれます。

ここには、天女が舞い降りて水浴びをする際、魔法の羽衣を掛けたという伝説が残る樹齢数百年の「羽衣の松」もあります。三保松原の静かな美しさを堪能した後は、三保神社へと続く神聖な「神の道」へ。樹齢数百年の松並木に縁取られた約500メートルの幻想的な小道は、この地の精神的な歴史との深いつながりを感じさせてくれます。

9世紀まで遡る歴史を持つ三保神社は、今も静岡の大切な精神的ランドマークであり、周囲のダイナミックな風景とは対照的な、心地よい静寂に包まれています。

1日目:午後

新鮮なマグロとわさび収穫体験

午前の散策を楽しんだ後は、静岡が誇る「海の恵み」を堪能しましょう。ランチに選んだのは、清水魚市場「河岸の市」まぐろ館の2階にある「ととすけ」。清水港から直送された鮮度抜群のマグロが自慢のカジュアルな海鮮レストランです。

注文した「まぐろトロ三昧定食」は、口の中でとろける刺身はもちろん、地元ならではの珍味、マグロのカマを甘辛い醤油で揚げた「ととすけ揚げ」が絶品でした。窓の外に広がる穏やかな清水港の景色も、食事をいっそう贅沢なものにしてくれます。

そして、日本の食体験に欠かせないのが、わさびです。静岡は、清らかな湧水と温暖な気候に恵まれ、本わさびの生産量で日本一を誇ります。今回は、築250年の歴史を刻む古民家「宿 にしむら」を訪ねた後、実際にわさび田での収穫に挑戦しました。

防水ブーツを履き、清流の中に足を踏み入れます。収穫までに最長2年もかかるという太い根茎の見分け方を教わり、丁寧に土から引き抜く作業は、まさに大地の生命力を感じる体験。収穫したばかりのみずみずしいわさびは、最高のお土産になりました。

1日目:夕方

「たがた」の手打ち蕎麦と「浮月楼」でのカクテル

わさび収穫を楽しんだ後は市街地へ戻り、「ホテルオーレ イン」にチェックイン。少し休憩した後、ディナーへと向かいました。今回選んだのは、もう一つの日本食の定番、蕎麦です。「手打ち蕎麦 たがた」では、希少な在来種の蕎麦粉を使った素晴らしいコース料理を堪能しました。

最初の料理が運ばれる前、店主の田形治さんが蕎麦切り包丁を使って麺を切る実演を見せてくれました。2017年に「ふじのくに食の都づくり仕事人」に選ばれた彼は、手打ち蕎麦の伝統を守り続ける職人です。その後に続く料理の一皿一皿に、彼のこだわりと技が凝縮されていました。

食事の後は、カクテルを飲みに「浮月楼」へ。1891年創業のこの歴史的な場所は、徳川幕府最後の将軍、徳川慶喜公の屋敷跡にあります。食事も楽しめるスタイリッシュな場所ですが、私たちは敷地内にある洗練されたデザインの「Bar Karyo」で至福の一杯を楽しみました。

浮月楼の最大の魅力は、池を中心に配された美しい庭園です。豊かな緑と古木に囲まれ、細部まで手入れされた庭園は、利用客だけが立ち入ることを許された特別な空間。静寂に包まれたプライベートな空気の中で、池に映る夜の光を眺めながら散策すれば、今日一日の旅を締めくくるのにふさわしい、穏やかで贅沢なひとときとなるでしょう。

2日目:午前

静岡浅間神社:江戸時代の雅を訪ねて

2日目の始まりは、「ホテルオーレ イン」14階にある絶景の天然温泉から。アルカリ性単純温泉の柔らかなお湯が肌を包み込み、サウナの心地よい熱さが体に活力を与えてくれます。都会の空を眺めながらの朝の入浴は、まさに至福のひとときです。

ホテル自慢の朝食ビュッフェでエネルギーをチャージした後は、静岡浅間神社へ向かいます。ここは「神部神社」「浅間神社」「大歳御祖神社」の三社からなる、地元で「おせんげんさん」と親しまれる聖域です。

あいにくの雨模様でしたが、しっとりと濡れた緑の中に建つ社殿は、鮮やかな漆塗りや繊細な彫刻、眩い金箔が際立ち、江戸時代の職人たちの卓越した技術を雄弁に物語っていました。神職の方の案内により、徳川幕府の創始者・徳川家康公との深い縁について学び、家康公がこの神社の再建や発展にいかに情熱を注いだかを知ることで、目の前の景色がいっそう奥深く感じられました。

その後は「駿府の工房 匠宿」へ。ここでは、藍染めや陶芸、駿河竹千筋細工などの伝統工芸を体験・見学できます。今回は時間の都合で体験はしませんでしたが、職人たちが一つひとつ丁寧に作品を作り上げる姿を見るのは非常に興味深いものでした。

© West Coast Brewing

2日目:午後

とろろ汁と地元のクラフトビール

「匠宿」の敷地内には、ラガービールを専門とするマイクロブルワリー「静岡醸造」もあります。私たちは爽やかな「Cold IPA Honeybock Shizuoka Classic」と、ほのかな蜂蜜の香りが楽しめる「Honey Pils Cold IPA」をいただきました。

続いて向かったのは、静岡名物のとろろ汁で知られる名店「一松園」。自然薯の力強い風味と出汁の香りが絶妙なとろろ汁を、麦ご飯と一緒にいただきました。旧東海道沿いの趣ある空間での食事は、旅の思い出をより深いものにしてくれます。

その後、用宗漁港にある「West Coast Brewing (WCB)」へ。ここはホップを効かせたIPAやヘイジーなビールで有名な地元の醸造所です。醸造工程を見学した後、併設のホテル「The Villa & Barrel Lounge」14階にあるタップルームで、バラエティ豊かなクラフトビールを。

16種類ものタップがありましたが、私は4種類の飲み比べセット(フライト)を選択。軽い飲み口のものから、リッチで重厚なものへと順番に味わうことで、クラフトビールの奥深さを存分に楽しむことができました。

2日目:夕方

「海ぼうず」のおでん:旅の締めくくり

「The Villa & Barrel Lounge」の客室にはビールサーバーがあり、宿泊客は最大10リットルのWCBビールを無料で楽しめるそうです。残念ながら今回は新幹線の時間があり、宿泊は叶いませんでしたが、東京へ戻る前にもう一つの静岡名物、おでんをいただく時間は残されていました。

旅の最後を飾るのは、静岡おでんフェアで何度も優勝している居酒屋「海ぼうず」。5時間かけて仕上げる半熟卵の「半熟玉子おでん」や、静岡名物の「黒はんぺん」は絶品でした。活気あふれる店内で楽しむおでんは、静岡での48時間を締めくくるのに最高のご馳走でした。