多くの訪日客にとって、日本の山々は単なる「背景」になりがちですが、実際には国土の70%以上が山岳地帯であり、その多くは東京から車なしで直接アクセスできます。本ガイドでは、ベテランハイカーも満足できる、電車やバスで行ける5つのおすすめ1泊2日登山ルートをご紹介します。

北岳
標高3,193メートル、日本第2位の高峰である北岳は、有名な富士山の影に隠れがちですが、ハイカーにとってはそれ以上の魅力があります。富士山の壮大なパノラマビューを楽しめるだけでなく、南アルプスの中心部を貫く変化に富んだ険しいトレイルを歩くことができます。山頂へは、ペースや間ノ岳(日本第3位)、農鳥岳などの周辺の山々を巡るかどうかにもよりますが、2日から4日かけて登るのが一般的です。これらは「白峰三山」として知られています。
週末を利用するなら1泊2日の行程を目指しましょう。山頂直下の 北岳肩の小屋 での一泊がおすすめです。ここのポークソテーは登山客に非常に人気があります。
難易度:中級〜上級。技術的に非常に難しい箇所はありませんが、長距離で険しく、太ももやふくらはぎを限界まで酷使する急勾配が続きます。スタミナと心肺機能は必須です。高所に慣れていない場合は、高山病への注意も必要です。
アクセス:登山口は南アルプス国立公園内の広河原にあります。マイカー規制区域のため、電車とバスを乗り継ぎます。東京・新宿駅から特急で約90分の甲府駅が拠点となります。甲府駅から 山梨交通 のバスで広河原へ(約2時間、片道2,400円)。バスは季節運行(主に夏季)のため、事前に時刻表を確認してください。

筑波山
標高わずか877メートルの筑波山は、日本百名山の中で最も低い山ですが、関東平野にそびえ立つその双耳峰(女体山・男体山)からは、晴れた日には東京スカイツリーや富士山まで見渡せます。初心者や家族連れに最適な山で、整備された多くの登山道から体力に合わせて選べるほか、ロープウェイやケーブルカーで登りを楽しむことも可能です。麓の筑波山神社周辺にはカフェや土産物店、温泉施設が充実しています。
日帰りも可能ですが、2月下旬の梅、5月のツツジ、11月の紅葉など季節の彩りを楽しみながらゆっくり過ごすのも一興です。下山後は筑波山温泉で疲れを癒やしましょう。
難易度:初級〜初中級。「迎場路」や山頂を結ぶトレイルは家族連れでも歩きやすい道ですが、「白雲橋コース」のような急な斜面を含むルートもあり、適度な運動になります。
アクセス:浅草駅からつくばエクスプレスでつくば駅へ(約45分)。隣接するつくばセンターのバスターミナルから、つつじヶ丘行きの 筑波山シャトルバス に乗り換え、「筑波山神社入口」で下車(約40分)。バスはICカード対応で、日中は1時間に1〜2本運行されています。
また、東京駅(八重洲南口)からつくばセンターまでの直行高速バスも毎日運行されています。
注意:12月1日から2月末日まではシャトルバスの運行体系が変わる場合があります。

焼岳
長野県と岐阜県の県境に位置する焼岳は、北アルプス唯一の活火山です。標高2,455メートルの南峰は崩落の危険があるため立ち入り禁止ですが、標高2,444メートルの北峰からは、周辺の稜線や眼下の上高地の絶景を楽しめます。現在も硫黄の蒸気が噴き出しています。
多くは上高地からの日帰りルートとして親しまれていますが、短時間でかなりの高度を稼ぐ急な登りが続きます。1泊で行く場合は周辺の山小屋を利用し、余裕を持った行程を組みましょう。非常に経験豊富な登山者であれば、さらに厳しい西穂高岳方面へのルートに挑むことも可能ですが、ヘルメット必須の技術的なセクションとなります。
難易度:中級。技術的な難しさはそれほどありませんが、短距離で一気に登る斜面が続きます。活火山特有の緊張感がありますが、常に気象庁の 火山情報 を確認し、ヘルメットを持参するなど安全対策を徹底してください。
アクセス:上高地側、または新穂高温泉側から入山できます。上高地へは松本からバス、新穂高へは高山から バス が便利です。片方から登って反対側へ降り、温泉を楽しむ「通り抜け」ルートも人気です。

燕岳
「北アルプスの女王」と称される燕岳(標高2,763メートル)は、白い花崗岩の稜線が美しい、中部地方屈指の景勝地です。北アルプスデビューにふさわしい山として知られていますが、北アルプス三大急登の一つ「合戦尾根」の登りは、確かな体力が求められます。
危険箇所が少ないため、日帰りからステップアップしたい初心者に最適です。山頂直下の 燕山荘 は、日本でも屈指の快適さとホスピタリティ、そして絶景を誇る山小屋です。途中の「合戦小屋」で食べられる冷やしスイカやうどんも登山客の楽しみの一つです。
難易度:初中級〜中級。急勾配ですが技術的な難しさは低めです。初夏には残雪がある場合があり、雨天時は花崗岩が滑りやすくなるため注意が必要です。
アクセス:新宿駅から特急あずさで松本駅へ(約2時間40分)、JR大糸線に乗り換え穂高駅へ。そこから 定期バス またはタクシーで約60分、中房温泉の登山口に到着します。

谷川岳
標高1,977メートルの谷川岳は、ロープウェイを利用した気軽なハイキングから、日本屈指の険しさを誇る本格的な登山まで、幅広い層を惹きつけています。日本三大岩場の一つとして、アルピニスト憧れの地でもあります。
かつての遭難者の多さから「魔の山」の異名も持ちますが、それは主に「一ノ倉沢」などの岩壁を攻める熟練者向けのルートを指します。一般客に人気の「天神尾根」ルートは、ロープウェイの助けもあり、比較的安全に素晴らしい稜線歩きを楽しめる初心者向けのコースです。特に秋の紅葉は圧巻です。
難易度:初級〜上級(ルートによる)。天神尾根ルートは天候が良ければ初心者でも楽しめますが、日本海側と太平洋側の分水嶺に位置するため、天候が非常に急変しやすいことで知られています。万全の装備を整え、少しでも不安を感じたら引き返す勇気を持ってください。
アクセス:東京駅から上越新幹線で上毛高原駅へ。そこからバスで約45分の谷川岳ロープウェイ駅が拠点となります。東京から登山口まで約2時間という抜群のアクセスを誇ります。
出発前に:安全第一を心がけましょう
日本の山はアクセスが良いとはいえ、厳しい大自然であることに変わりはありません。急な天候の変化に備えたレイヤリング(重ね着)、応急処置セット、適切な登山靴を用意してください。紙の地図や、オフラインでも使えるGPSアプリ「YAMAP」は非常に有効です。また、入山前には必ず最新の天気予報を確認し、警察や山小屋へ登山届(登山計画書)を提出しましょう。緊急連絡先は警察が110番、消防・救急が119番です。安全に気をつけて、日本の山の絶景を楽しんでください!