日本の「黄金時代」と称されることも多い昭和時代は、文脈の上では昭和天皇の在位期間である1926年から1989年までを指します。20世紀の大半を占める長い時代であったため、ひとつの世代全体のアイデンティティを内包しています。昭和という時代は、第二次世界大戦への突入、戦中・戦後の飢餓や貧困、そして戦後の劇的な経済成長を経験しました。現在見られる「昭和レトロ」のブームが反映しているのは、主に1950年代から1970年代(昭和30年代〜40年代)にかけての、エネルギーに満ちあふれた激動の時代です。
この時代、日本は多くの苦難に直面したものの、同時に技術の飛躍的な進歩と多くのチャンスにも恵まれました。それに伴って経済的な繁栄がもたらされ、日々の暮らしを便利にするモダンな贅沢品を通じて、物質的な豊かさに裏打ちされた幸福感が広がっていきました。必死に働き、多くのモノを買うというこの行動指針は、1980年代後半にバブルが崩壊した後も長く受け継がれることになります。長く厳しい貧困を経験し、西洋的なカルチャーが禁止されていた時代を経て、日本がこれほど多くのものを自らの解釈を交えながら自由に、そして貪欲に取り入れていったことは、決して不思議なことではないのかもしれません。
昭和カルチャーのルネサンス
ここ10年ほどの間に、昭和時代への関心は着実に高まりを見せています。かつては現代の若者から「ダサい」と敬遠されていた時代が、「レトロ・シック」がクールとされる現代において、独自の魅力を確立したのです。このノスタルジーの波は、ファッションからメディア、さらには旅行にいたるまで、現代文化のあらゆる局面に浸透しています。
昭和時代を舞台にしたポップカルチャーがメインストリームのメディアに本格的に返り咲いたのは、2000年代半ばのことでした。古き良き時代をロマンチックに描いた数々のテレビドラマや映画の中でも、2005年公開の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』は大ヒットを記録し、2007年の続編も同様に高い評価を得ました。また、NHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』は、可能性に満ちあふれた時代の空気感や、もっと上を目指して自立しようとする人々(特に女性たち)のエネルギーを捉え、多くの人の心に深く響きました。
企業もこのノスタルジーへの関心に商機を見出し、お台場や柴又には昭和30年代をテーマにしたレトロな施設が作られ、池袋や横浜にも昭和風の駄菓子屋などが登場しています。また、熱海や青梅といった地方都市は、街に残る昭和らしさを前面に出すことで観光客を呼び込んでおり、庶民のための社交場である「大衆酒場」もまたビジネスの盛り返しを見せています。ヴィンテージ・ファッション(着物を含む)も20代の間で人気が高まっています。こうした文化的・物理的なあらゆる側面が昭和レトロのブームを後押ししていますが、ここでひとつの疑問が浮かび上がります。一体なぜ、いま昭和なのでしょうか。
レトロブームはどこからやってきたのか?
過去への切ない憧れを誘うこの波が、これほどまでに強く定着している理由については様々な推測がなされていますが、際立った要因がいくつか存在します。東京の観光産業に従事する田中りえさん(仮名)は、戦後の復興期、そしてそれ以降もずっと、日本人は常に最新の新しいものばかりに目を向け、少し前の過去については忘れてしまうか、単に関心を持たずにいたのだと説明してくれます。
しかし、現在の経済的な停滞の中で、今の若者たちは内側、そして過去へと目を向けるようになっています。海外旅行の代わりに国内を旅して出費を抑え、自分たちの前にあった時代の価値を再評価し始めているのです。並行して、彼女の現場では日本の歴史(最近では昭和時代にとどまらず)への関心が高まっているように感じられると言います。「多くの日本のミレニアル世代が、自分たちの未来に生きづらさや厳しさしか見出せないでいる現状を考えれば、彼らが過去に目を向けるのも無理はありません。彼らは、まだ明るく希望に満ちた未来がそこにあった時代を見つめているのです」
興味深いことに、法政大学教授で社会心理学を専門とする稲増龍夫氏は、このレトロブームがこれまでの単なる一過性の流行とは異なるものになると予見していました。2006年の『Japan Spotlight』(Japan Economic Forum発行)の記事の中で同氏は、その理由として、その時代を実際に生きてきた世代である「団塊の世代(ベビーブーマー)」が今なお健在であるだけでなく、彼ら自身がその魅力を積極的に発信しているからだと指摘しています。この世代の多くが定年退職を迎え、地域社会でボランティア活動などに関わっているため、日本の「古き良き時代」を垣間見たいという現代のニーズに、自らの意思で応えることができる立場にあるのです。

青梅市の街並みには、今も昭和時代の映画看板が誇らしげに掲げられています
昭和が現代に問いかけるもの
昭和時代のアイテムや場所が、その時代の持つノスタルジックな魅力や、アヴァンギャルドなデザインゆえに、日本人はもちろん外国人からも支持されていることは間違いありません。このブームが今後も定着し続けるかは未知数ですが、インスピレーションを得るために過去を振り返ることには大きな意味があるのかもしれません。日本は消費主義へと急ぐあまり、大切な何かを置き忘れてきてしまったのかもしれません。そして今、若い世代もシニア世代も、それを取り戻そうとしています。その模索が、単なる思い出美化にとどまらないのであれば、過ぎ去った時代が持つゆったりとした情緒を受け入れることは、この刺激が強く、スピードが速く、ストレスの多い現代の日常にとって、まさに必要な癒やしとなるはずです。

熱海にある和田たばこ店
昭和の雰囲気に浸れるおすすめスポット
東京のあちこちにある商店街や純喫茶、横丁などでも戦後の面影を断片的に味わうことはできますが、より深く昭和の世界へと没入したいなら、以下のスポットに足を運んでみるのがおすすめです。
青梅:東京西部に位置する青梅市は、街をあげて昭和レトロな雰囲気を発信しています。街のいたるところに手書きの映画看板が掲げられ、昔ながらの商店街や、懐かしいパッケージが並ぶ「昭和レトロ商品博物館」などを楽しむことができます。
熱海:かつて「日本の東洋のリビエラ」ともてはやされた熱海は、バブル崩壊後に一時期衰退を見せたものの、近年見事な復活を遂げています。多くの洋食店では、日本流に進化した当時の洋食(オムライス、トンカツ、ナポリタンなど)のオリジナルレシピが今も提供されており、当時の内装をそのまま残す店舗も少なくありません。一方で、かつてシャッターを閉めていた店がモダンにリニューアルされる動きも活発です。
大田区:都内の区の中で最も多くの銭湯があることで有名な大田区には、保存状態の良い伝統的な日本家屋が多く残されており、そのうちの1軒は「昭和のくらし博物館」として公開されています。どこか懐かしい佇まいの商店街が広がり、タイミングが良ければ店頭でせんべいを焼く香ばしい香りに出会えるかもしれません。
伊香保 おもちゃと人形 自動車博物館:群馬県の伊香保は風情ある温泉街として有名ですが、ここにはクラシックカーのコレクションや、昭和のアイドルポスターの展示なども充実した、大人も子どもも夢中になれる見応え抜群の博物館があります。
キラキラ橘商店街:墨田区京島にあるこの商店街には、昔ながらのお惣菜屋や海苔屋などが軒を連ね、おでんなどの下町グルメを楽しめます。毎月第4日曜日には名物の朝市が開催され、より地域に密着したローカルな活気を肌で感じることができます。
タイヤ市場 相模原店(中古タイヤ市場 相模原店 自販機コーナー):このお店の本来のビジネスはタイヤやホイールキャップの販売ですが、敷地内にずらりと並んだレトロ自販機コーナーがあまりにも有名です。ポップコーンやカップ麺をはじめ、そば、うどん、さらにはハンバーガーまで、昭和の懐かしい自動販売機が現役で稼働しています。
昭和館:九段下にある国立の施設である昭和館は、戦中・戦後の国民生活に関する実物資料を収集・保存し、当時の人々の暮らしの足跡をリアルに伝える展示を行っています。

1970年代の日本で絶大な人気を誇った歌姫のひとり、山口百恵
昭和を掘り起こすイベント&マーケット
ジャンクショー:定期的に開催されているアンティークマーケットで、アメリカンレトロを中心に、ヴィンテージのおもちゃや、どこか懐かしい生活雑貨、アクセサリーなどが集まる宝探しのようなイベントです。
昭和レトロ市:年に2回ほど開催されるイベントで、昭和時代の本物の家具や生活雑貨、古道具、ファッションアイテムなどが一堂に会し、コレクターたちで賑わいます。
この記事は、Lisa Wallinによる英語の原文を翻訳・編集したものです。