今月、東京のギャラリーや美術館では、この春最も期待されている展覧会がいくつか開催されます。ロン・ミュエクが18年ぶりに来日し、超現実とシュルレアリスムを融合させた、見る者を揺さぶる彫刻作品を展示。ポルトガルの写真家テレサ・フレイタスは表参道で東京初個展を開催し、世界の対極にある場所が意外な形で共鳴し合う作品を紹介します。新宿では、金子富之が日本神話の嵐の神、スサノオを描いた強烈な3点の絵画を発表。都内各地では他にも、溶けゆくワックスの自画像、神事をテーマにした夢幻的な絵画、そしてスイスの画家カール・ヴァルザーの貴重な回顧展などが開催されます。

ロン・ミュエク「Mask II」(2002年)個人蔵。展示風景:ロン・ミュエク展、韓国国立現代美術館(ソウル)、2025年。撮影:Nam Kiyong、協力:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館
ロン・ミュエク展
ロン・ミュエクの彫刻は、ハイパーリアリズムとデフォルメの絶妙な境界線上にあります。肌の質感、毛髪、目元の細かな疲れまでが驚くほど緻密に描写され、あまりにリアルに感じられます。しかし、そのスケールは常に狂っています。車ほどの大きさの赤ん坊がいれば、手のひらに乗るような大人の男もいる。観る者の感覚を惑わせる不思議な体験が待っています。
1958年にメルボルンで生まれ、英国を拠点に活動するミュエクは、過去30年間で約50点の彫刻を制作してきました。一点の完成に数ヶ月、時には数年を要します。本展では、100個の巨大な頭蓋骨が並ぶシュールなインスタレーション「マス」(2016-2017年)を含む11点を展示。そのうち6点は日本初公開で、国内では18年ぶりの個展となります。
会場: 森美術館
会期:4月29日〜9月23日
料金: ¥1,400〜¥2,500
スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照
カール・ヴァルザーの絵画には、象徴主義と童話の中間にあるような、どこか奇妙で夢心地な魅力があり、その奥底にはほのかな哀愁が漂っています。彼の作品の多くはベルリンで制作されました。彼は当時、アカデミックな絵画の堅苦しさに反旗を翻したアーティスト集団「分離派」の一員でした。しかし、彼の活動は絵画にとどまらず、本の挿絵、演劇の舞台装置や衣装デザインを手がけ、晩年には壁画制作にも力を注ぎました。
1908年、ヴァルザーは日本を訪れ、数ヶ月をかけて歌舞伎役者や京都の納涼床、祇園祭の喧騒など、目に留まったものをスケッチしました。それらの水彩画の多くはこれまで公にされる機会が少なかったものですが、色彩は今なお驚くほど鮮やかです。本展は、約150点の作品を集めた、日本で初めてのヴァルザー回顧展となります。
会場: 東京ステーションギャラリー
会期:4月18日〜6月21日(月曜休館、5月4日と6月15日は開館)
料金: ¥1,300〜¥1,800
ウルス・フィッシャー 間違い探し – Spot the Difference
ウルス・フィッシャーの作品は、ハイカルチャーとキッチュ、不変と刹那、そして真面目さと滑稽さの間を行き来します。ファーガス・マカフリー東京での初個展となる「ウルス・フィッシャー 間違い探し – Spot the Difference」は、完成された地上階と、未完成のままの地下2階というギャラリー自体の構造を着想源としています。この空間の対比は、意識と無意識を考察する試みとなりました。
地上階では、壁に開けられた粗い穴を通して、2体の等身大のワックス製自画像が向き合っています。開幕日に点火されたこれらの像は、会期を通じてゆっくりと溶け、再び鋳造されては最初からやり直されます。地下では、コンクリートの穴や継ぎ目が描かれたロールシャッハ・テストのような壁紙が空間を包み込み、ブロンズ彫刻やドローイングが展示されています。
1973年チューリッヒ生まれ、ロサンゼルスを拠点に活動するフィッシャー。本展は、彼の「キャンドル・ポートレート」シリーズを日本で目にする貴重な機会となります。
会場: ファーガス・マカフリー
会期:4月11日〜7月4日(5月4日〜6日は休館)
料金: 無料
金子富之展「須佐之男の息吹き」
スサノオは日本神話における嵐の神であり、荒れ狂う海や突発的な嵐、制御不能な力を司る神性です。今回の個展で金子富之は、ギャラリーの壁を覆う3点の大型絵画を通じて、古くから信仰されてきたスサノオの多面的な姿を探求しています。これらの大作に加え、彩色された石、張り子の面、だるまなど、10点以上の小品も展示されます。
金子の作品は、人間には制御できない力に、文化がどのように形を与えてきたかという問いに常に立ち返ります。東北・山形の辺境の村で制作を行う彼は、神、精霊、妖怪といった目に見えない精神的な存在に、何世紀にもわたって積み重ねられてきた信仰の層を反映させながら、具体的な形を与えています。
会場: ミヅマアートギャラリー
会期:4月22日〜5月23日(日曜、月曜、祝日休館)
料金: 無料
山下紘加 「白気 White Veils」
霧、湯気、線香の煙、世界を白く染める雪。山下紘加の新作には、こうした儚い存在が漂い、神楽や祭りに集う人々、雪景色、静かな水辺の情景を包み込みます。白く揺らめくヴェールは、その奥にあるものを完全には見せてくれません。タカ・イシイギャラリーでの2度目の個展となる「白気 White Veils」では、これらのテーマを軸にした新作18点が発表されます。
山下の作品は、自身が実際に各地の神事や祭りを訪れた経験を基に、日本神話やアニミズムの伝統から着想を得ています。新作の多くは、彼女が2024年から研究を続けている神楽をモチーフにしています。日本では古くから「白」は神聖な印として解釈されてきましたが、本展の作品群では、日本の古画の核心にある色である深い赤や黒とともに、白が重要な役割を果たしています。
会場: タカ・イシイギャラリー(六本木・京橋)
会期:5月16日〜6月20日(日曜、月曜、祝日休館)
料金: 無料
エリック・カールエリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし
絵本『はらぺこあおむし』ほど、世界中の子供たちに愛されてきた作品は他にないでしょう。アメリカの作家エリック・カールが生み出したこの物語は、70以上の言語に翻訳され、世代を超えて読み継がれてきました。その核心にあるのは、「ちっぽけなあおむしが世界を食べ進み、美しい蝶へと成長する」という、シンプルながらも心に残るメッセージ。それは希望、変化、そして「自分らしくあること」についての物語です。
日本語版刊行50周年を記念する本展では、貴重な原画やカールのアイデアが形になる過程を示す手作りの「ダミーブック」など、約180点を展示。また、後の遊び心あふれる仕掛け絵本の基礎となった、グラフィックデザイナー時代の初期作品も紹介されます。
会場: 東京都現代美術館
会期:4月25日〜7月26日(5月7日、7月21日、および月曜休館。ただし5月4日、7月20日は開館)
料金: ¥1,600〜¥2,300

ライカギャラリー表参道 © Teresa Freitas
テレサ・フレイタス Meeting Point
ポルトガルの写真家テレサ・フレイタスにとって、「色」こそがすべてです。それは彼女のイメージを繋ぎ止める要素であり、空間を形作り、視線を誘導し、共通点のない場所同士を統合します。彼女の作品はストリート、ドキュメンタリー、ファインアート・フォトグラフィーの間を自在に行き来し、独自の視覚言語を構築しています。
ライカギャラリー表参道で開催される「Meeting Point」では、世界の遠く離れた場所(東洋と西洋として緩やかに枠付けされた場所)で撮影された写真をペアにし、並べて展示しています。それぞれのペアは、視覚的な韻(ライム)のような関係を持っています。ある場所の青色が、何千マイルも離れた別の場所の同じ青色と共鳴し、建築の曲線が海の向こうで一致を見せることで、その距離感は次第に溶け去っていきます。長年蓄積されたイメージから構成された本展は、写真的な記憶がいかに形成され、視覚がどのように世界を超えた意外な繋がりを見出していくかを示しています。
会場: ライカギャラリー表参道
会期:4月2日〜6月28日(月曜休館)
料金: 無料

アンドリュー・ワイエス展
1917年生まれのアンドリュー・ワイエスは、アメリカで最も愛されている画家の一人として広く知られています。当時の多くのアーティストが抽象表現主義やポップアートといった大胆な新運動を追い求めていた中、ワイエスは独自の道を歩みました。彼は故郷の近くに留まり、ペンシルベニア州の農村やメイン州の海岸沿いの見慣れた人々、家々、野原を描き続けました。
しかし、彼の絵画は単なる田舎の美しい風景画ではありません。よく見ると、感情や記憶、そして生命の脆さが込められた深い情景が広がっています。ワイエスは窓やドア、あるいはその他の「境界線」に特に関心を持っていました。こうした日常の断片は、彼の手によって特別な意味を持つようになります。それは、馴染みのある世界と未知の世界、あるいは生と、その先に横たわるものとの境界を優しく思い起こさせるのです。
会場: 東京都美術館
会期:4月28日〜7月5日(5月7日、および月曜休館。ただし5月4日、6月29日は開館)
料金: ¥1,100〜¥2,300
この記事は、 Eugenie Shinによる英語の原文を翻訳・編集したものです。