香りは、ポジティブなものであれネガティブなものであれ、長期記憶を呼び覚ます最も強力な五感のトリガーの一つと言われています。日焼け止めの香りは一瞬にして楽しかったビーチの日へとタイムスリップさせてくれますし、元カレが愛用していたコロンの香りは一瞬にして警戒モードを引き起こすかもしれません。
世界屈指のフレグランス文化が花開く日本。いまフレグランス愛好家たちの視線を集めているのが、メゾンブランドが手がける「日本限定フレグランス」です。日本の伝統美や自然の恵みに敬意を捧げ、西洋の調香技術と見事に融合させた香水たちは、どこか深くドラマチックでありながら、洗練されたモダンな気品を漂わせます。
今回は、バイレード(Byredo)から登場した話題の新作「オボロ(Oboro)」をはじめ、大人の香水コレクションを格上げしてくれる「日本限定フレグランス」5選をご紹介します。

ル ラボ:Gaiac 10(東京限定)
東京で一度は試してみるべき香りをひとつ挙げるなら、ル ラボの愛される東京限定フレグランス、「Gaiac 10」です。カルト的な人気を誇るこの香りは、ミニマルでクリーンでありながら、どこかスモーキーでミステリアス。自分らしさを象徴するシグネチャーとして完璧な存在感を放ちます。
その名の通り、ガイアック 10はガイアックウッドを中心に構成されています。ル ラボによると、「ガイアックは非常に硬く、シダーほど乾燥していない緑がかった木材で、繊細でありながら深みがあり、力強い安定感を持っている」とのこと。香りのブーケを締めくくるのは、シダー、乳香、そして4種類のムスクノート。これが香水にスモーキーでお香のような気品を与えています。
一つ留意すべき点は、ル ラボのシティ エクスクルーシブ シリーズの多くがそうであるように、この香りも拡散力や持続性が強すぎないという点です。しかし、控えめでありながら凛としたプライベートな香りのヴェールをまといたい方には、これ以上ない選択肢となります。ガイアック 10は秋に纏うのが最高ですが、一年を通して心地よく使えます。

ル ラボ:Osmanthus 19(京都限定)
ル ラボの発祥地であるアメリカを除けば、一つの国に複数のシティ エクスクルーシブが存在することは非常に珍しいことです。「Osmanthus 19」は、話題のコンセプトショップ「ル ラボ 京都町家」のシンボルとして発表され、大きな話題を呼びました。
ガイアック 10と同様に、オスマンサス 19も古都の歴史ある寺院や町家にインスパイアされた、お香のニュアンスを含むウッディで樹脂調の奥深さを持っています。しかし、その中心には華やかなフローラルノートが広がります。アプリコットのようなほのかな甘さを持つ金木犀の花が、深みのあるウッディノートと美しく調和しています。付けたてには、かすかなラベンダーの爽やかさも感じられます。
オスマンサス 19は、ガイアック 10ほどのカリスマ的な唯一無二感には及ばないかもしれませんが、京都を訪れた際に試す価値のある素晴らしい都市限定フレグランスです。ただし、京都町家の店舗は大変混雑することが多く、時間帯によっては商品の受け取りまでに待つこともありますので、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。

Byredo:Oboro
Byredo初の日本限定フレグランスとして発表された「Oboro」は、日本語の「朧(おぼろ)」——かすんだ、あるいは霞がかかった様子——からインスピレーションを得ています。特に、雲のヴェールに包まれた春の月を指す「おぼろ月」の情緒を表現しています。
その着想にふさわしく、トップノートにはベルガモット、ジンジャー、ブラックペッパーの繊細な組み合わせを配し、ミドルノートにはバイオレットリーフ、ピオニー、ミネラルノートが優しく漂います。ラストにはソルト、アンバー、ベチバー、インセンスが残り、アーバルで夏らしくフレッシュでありながら、肌になじむとアーシーで温かみのある肌香へと変化し、極めて日常使いしやすい仕上がりとなっています。
この調香を手がけたのは、バイレードのアイコン的ベストセラーである「バル ダフレック」や「ジプシー ウォーター アブソリュ」、「ラ チューリップ」を生み出した名調香師、ジェローム・エピネットです。さらにキャンペーンには、その呪術的な朗読や多角的な作品で知られる伝説的な詩人・吉増剛造氏が起用されています。
この香りがバイレードの代表作(「モハーヴェ ゴースト」や「ビブリオテーク」など)に立ち並ぶ存在になるかどうかはこれからですが、「オボロ」がブランドにとって極めて魅惑的な国限定フレグランスへの第一歩であることは間違いありません。

Fugazzi:マッチャブヤ
香水関連のSNSやコンテンツを日常的にチェックしている方なら、「エンジェル ダスト」や「ヴァニラ ヘイズ」、「オレンジ クラッシュ」などの大ヒット作で知られるFugazziの名を耳にしたことがあるでしょう。「マッチャブヤ」は、アムステルダム発の同ブランドが手がける数少ない国限定フレグランスの一つで、もちろん「抹茶」からインスピレーションを受けています。
ベルガモット、抹茶、レモングラスの清々しいトップノートから始まり、ヒノキ、ムスク、シダー、シーウィードのノートがバランスを整える、暖かく爽やかな季節にぴったりの香りです。純粋な「お茶」の香りというよりも、アクアティックでシトラスが効いたフレッシュな仕上がりで、ハーブ感が強すぎず非常に纏いやすいのが特徴です。
ル ラボの「THÉ MATCHA 26」と比較されることもありますが、ニュートラルでありながら凛とした、シャープさと柔らかさを併せ持つ独特のシグネチャー感とは異なり、フガッジの抹茶の解釈はより季節感を楽しめるポップなアプローチと言えます。
アムステルダムの旗艦店や欧米のオンラインストアで時折見かけることもありますが、渋谷の旗艦店やNOSE SHOPの各店舗を訪れるのが確実に手に入れる近道です。

ドルセー:スウィート ディスラプション
元々は日本のブティック限定として発売されたドルセー(D’Orsay)の「スウィート ディスラプション(Sweet Disruption)」は、現在では国際的にも展開されています。しかし、美しいインテリアと一流の接客を体験するためだけにでも、都内にあるドルセーのブティックを訪れる価値は十分にあります。
パリに本店を置くこの老舗香水メゾンは、1世紀以上の歴史を誇ります。その名は、19世紀のダンディであり、豊かな芸術的感性、抜群のファッションセンス、そして数々のスキャンダラスなロマンスで知られたドルセー伯爵に由来しています。
このリストの他の香り同様、スウィート ディスラプションもインセンス、ベチバー、そして柑橘類(マンダリンオレンジやレモン)のノートを通じて日本へのオマージュを捧げています。ミントとピンクペッパーのトップノートのおかげで、開け放たれるような非常に爽やかでシャープなオープニングを迎えます。香りの中心を担うのは、ゼラニウムとエジプシャンジャスミンによる上品なフローラルです。
ケンゾーの「プードル マッチャ」も手がけた調香師ジャン=クリストフ・エローは、こちらでこの香水に込めたビジョンを語っています。シトラスの爽やかさと絶妙な調和、そして主張しすぎない上品なインセンスの余韻は、オールシーズン安心して身につけられる完成度を誇ります。
この記事は、Eugenie Shinによる英語の原文を翻訳・編集したものです。