東京が世界でも有数のアート溢れる都市であることは言うまでもありません。ここにある美術館は、収蔵品の細やかな保存、巧みに編まれたコレクション、そして次々と行われる素晴らしい企画展で世界的にも知られています。古代から現代まで、あらゆる時代のアートを鑑賞するだけで旅の時間を費やせますが、それでも東京が誇る芸術の全貌には到底及びません。
東京国立博物館、国立新美術館、森美術館のような有名館のほかにも、市内には知名度は高くないが同じく魅力的な美術館が数多くあります。
この記事では、ぜひチェックしておきたい隠れた美術館をいくつかご紹介します。

東京都庭園美術館 (白金台)
1933年に建てられた元皇室の邸宅で、建築ファンには必見のスポットです。希少なほどよく保存された本格的なアールデコ建築で、フランスと日本の美意識が融合しています。館内の企画展を眺めると、アンリ・ラパン(Henri Rapin)の壁画やルネ・ラリック(René Lalique)のガラス細工など、フランス人デザイナーによる装飾の数々が目を引きます。庭園も東京の中でもお気に入りの一つで、特に紅葉の時期がおすすめです。日本庭園と西洋風庭園が組み合わさった広い庭は30分ほどで周れますが、ゆっくり散策するのが良いでしょう。館内のレストラン 庭園レストラン コモドと カフェ庭園も庭に面した景色が好評です。

朝倉彫塑館(谷中)
この美術館は西洋彫刻で名高い彫刻家 朝倉文夫の住居兼アトリエとして建てられました。彼は「日本のロダン」とも称され、1948年には文化功労章を受章した人物です。浅倉自身が設計した建物は登録有形文化財で、空間構成の傑作です。大規模なブロンズ彫刻用の高い天井を持つ西洋風のスタジオから、木の質感と落ち着いた庭を持つ静かな日本家屋の居住部へと移動しながら鑑賞します。静かで懐かしい雰囲気の谷中に位置し、東京で現存する最古の屋上庭園も有しています。

三菱一号館美術館 (丸の内)
東京駅周辺にいるなら、丸の内の三菱一号館美術館にぜひ立ち寄ってみてください。丁寧に企画された特別展を開催することが多い、あまり知られていない名所です。1894年に英国人建築家 ジョサイア・コンドル が設計したこの建物は、丸の内で最初の西洋式オフィスビルとして建てられ、当初は三菱の銀行部が入っていました。1960年代に一度解体されましたが、約40年後に忠実に復元されました。コンドルによるクイーンアン様式が再現されている点が特徴です。館内で人気なのはカフェ兼バーの Café 1894 で、かつての銀行部屋をそのまま利用しており、映画のような雰囲気を味わえます(予約をおすすめします)。

世田谷美術館 (世田谷)
約1万8千点に及ぶ日本および海外の近現代美術コレクションを誇るにもかかわらず、世田谷美術館は比較的地味な存在です。閑静な砧公園内にあり、内井昭蔵による設計で、低層の波打つような建物が周囲の緑と調和しています。世田谷の芸術史を顕彰することも重要な使命であり、そのため地域に縁のある作家(向井潤吉や高山辰雄など)の重要な作品を所蔵しています。また、アンリ・ルソーや オルネオーレ・メテリ、ルイ・ヴィヴァンといった作家による素朴派(ナイーブアート)の優れたコレクションも見られます。

日本民藝館 (駒場)
日本民藝館は柳宗悦によって1936年に創設され、民芸の理念、すなわち無名の職人によって作られた日用品の美を称える運動を中心に据えています。柳は1925年に陶芸家の河井寬次郎、濱田庄司とともに「民芸」という言葉を提唱しました。柳が設計した本館は木造と大谷石の美しい造りで、東京都の登録有形文化財です。現在、朝鮮王朝(1392–1910)の陶磁器、英国のスリップウェア、アイヌの衣装、東北地方の刺し子織物など、約1万7千点の工芸品を収蔵しています。

ワタリウム美術館(神宮前)
スイスの建築家マリオ・ボッタによる印象的な幾何学的建築は、家族経営の私設美術館で、見事な現代アート展で知られています。コレクションは初代館長の和多利志津子が収集したもので、アンディ・ウォーホルやキース・ヘリングなどの西洋の現代作家を日本に紹介した先駆者の一人でした。Watari-um(正式名:Watari Museum of Contemporary Art)は年に数回の特別展を開催し、故ヤン・ホートやハラルド・ゼーマンなど著名な客員キュレーターを迎えた歴史もあります。青山、原宿、表参道に近いため、街歩きのついでに立ち寄りやすいスポットです。

東京都写真美術館 (恵比寿)
写真と映像だけに特化した数少ない美術館の一つである東京写真美術館は、恵比寿ガーデンプレイス内にありアクセスが良好です。1995年に設立され、視覚文化の保存と普及を目的とし、19世紀のダゲレオタイプから現在に至るまでの写真の発展をたどる3万7千点以上のコレクションを所蔵しています。企画展に加え、常設コレクションには植田正治、森山大道、アンセル・アダムス、ロベール・ドアノーといった国内外の名作も含まれています。