霧に包まれた山々と荒々しい海岸線の間にたたずむ大分県は、温泉で知られていますが、この活気ある県の魅力は癒やしの湯だけではありません。息をのむ景観、素朴な信仰の地、神秘的な遺物、そして日本屈指の麦焼酎を誇る地域です。 

数々の名だたる焼酎ブランドの故郷でもあり、なかでも国内で最も有名と言っても過言ではない銘柄「いいちこ」を生んだ地でもあります。澄んだ口当たりと滑らかな麦の個性で知られるいいちこは、大分の蒸溜文化を形づくる静かな精密さと職人技を映し出しています。今回の取材では、その技を間近で見る機会に恵まれました。  

いいちこ 焼酎テイスティングセッション 

旅の始まりは いいちこ 日田蒸溜所。大手飲料メーカー・三和酒類が運営する広大な施設で、秋には敷地一面が赤やオレンジ、黄金色の葉に染まり、息をのむ美しさになります。館内では、いいちこの名高い仕込み工程を学ぶ興味深い蒸溜所ツアーに参加。麦麹のみを用いる製法を見学し、さらに焼酎が熟成する貯蔵庫も訪れました。

ツアーの締めくくりは、いいちこ焼酎3種の試飲。水割りとストレートで飲み比べました。いずれも日田蒸溜所限定販売で、アルコール度数(ABV)は40%超と、一般的な焼酎よりかなり高め。中でも印象的だったのは、長期熟成の貯蔵原酒で、とろりと濃密な質感に、ウイスキーを思わせる風味が重なります。 

次の試飲は、地元食材で作る料理と飲み物を揃える上品なダイニング、「麦の蔵」で。三和酒類が2022年に開いたスタイリッシュな日本酒体験施設「辛島 虚空乃蔵」内にあり、学ぶ・味わう・さらには自分で仕込むことまでできます。ここでは、爽やかなマイクロブリューシリーズ「和香牡丹 輪奏」を、特製味噌と赤酢を使った軽いおつまみとともに楽しみました。 

地元の人気店 

麦の蔵のつまみは、メインの食事に向けた食欲をそそる前菜に。メインは、創業50年以上のカジュアルな居酒屋「生一本」でいただきました。地元で圧倒的な人気を誇り、サクッと揚がったとり天や、りゅうきゅう(新鮮な魚を一口大に切り、醤油・みりん・ごま・生姜などで和えた料理)といった大分名物を味わうのに最適です。

料理に合わせて 生一本ではさまざまなドリンクも注文し、夜の締めは近くのスポーツバー「Bepper’s Tavern」でカクテルを2杯。日本のカクテル文化をニューヨークに広めた立役者とも言われる名バーテンダー、池田真一氏がサポートするトレンドスポットです。国際色のある雰囲気で、ハンバーガーでも知られていますが、今回はサイドメニューを選びました。 

ほろ酔い気分で向かったのは、この日の宿「御宿 野乃」。有名なドーミーインのプレミアム版で、畳敷きにサータのベッドを配した、モダンでありながら和の趣も感じる客室が魅力です。さらに、建物18階には別府湾を望む男女別の温泉大浴場も。もう一つの楽しみは、洋食と郷土料理が並ぶビュッフェ朝食です。 

六郷満山 

ホテルから車で約1時間少々。2日目最初の目的地は両子寺です。国東半島の両子山中腹にあるこの寺は、六郷満山の中心寺院。六郷満山とは、仏教・神道・古来の山岳信仰という三つの精神文化が融合して形づくられた神仏習合の信仰文化です。森の奥深くに佇む、神秘的で静謐な場所で、思索と内省にぴったりでした。 

同じことは次の目的地、六郷満山の精神的発祥地である宇佐神宮にも言えます。全国約44,000社の八幡神社の総本宮で、弓矢と戦の 神仏習合の神格を祀り、皇室ともゆかりが深く、1300年以上の歴史を誇ります。広大な境内の見どころは、朱塗りの神橋、巨大な鳥居、そして「真心の願いに応える」と信じられる大楠です。 

大楠は本殿(上宮)の前にあります。国宝に指定された本殿は、切妻の平入建築2棟が前後に連結した印象的な構造。参拝者は上宮の外から拝礼できます(宇佐神宮の作法は二拝四拍手一拝)が、内陣への立ち入りは禁止されています。しかしこの日は特別に許可を得て、中に入り祈祷と奉納の儀式を拝見しました。 

いいちこ彩天 の祈願・奉納儀式 

儀式は、いいちこ彩天のさらなる成功を祈るために行われました。いいちこ彩天はアルコール度数43%のプレミアムで芳醇な麦本格焼酎。2019年の米国発売に先立ち、アメリカのバーテンダーといいちこチームが2年かけて共同開発しました。2025年に日本上陸を果たすと、たちまち話題に。カクテル用に設計された複雑味が特徴で、豊かな旨味のあとに、ほのかな甘みとほろ苦さが続きます。 

成功祈願の儀式には、日本バーテンダー協会会長の上野秀嗣氏をはじめ、飲料業界の要人が複数出席。メインボトルに加え、いいちこ彩天を使ったオリジナルカクテル3種も神前に奉納されました。限定リリースの安心院ワインとグレナデンシロップを用いた「Shinkiku」、ブルーキュラソーとフレッシュレモンジュース、ブラックサンブーカを合わせた「Tenku no Koji」などです。 

3種の中で最も印象的だったのは「White Koji Lady」。クラシックカクテル「ホワイトレディ」を再解釈し、ジンの代わりにいいちこ彩天を用いた一杯です。このほか2種のカクテルも、イノシシ肉のミートパイや、いいちこ彩天を練り込んだオリジナル和菓子などの軽食とともに提供されました。美味を堪能していると、東池の能舞台では特別な太鼓演奏も。記憶に残るツアーを締めくくる、映像と音のスペクタクルでした。