9月の訪れは、日本の愛すべき秋の風物詩「芸術の秋」の到来を意味します。今年のカレンダーは、非常に期待の高まる魅力的なラインナップでスタートを切ります。国立新美術館で公開されるルーヴル美術館の壮大なルネサンス・アート・コレクションから、麻布台のPaceギャラリーで開催されるナイジェル・クックによるヴェネツィアの情景を描いた抽象画、そして東京都現代美術館での1930年代の台湾アヴァンギャルドに焦点を当てた展覧会まで、実に多彩です。
今月東京でチェックすべき注目のアート展8選に加え、箱根への日帰り旅で楽しめる展覧会をピックアップしてご紹介します。
9月の必見展覧会8選

ルーヴル美術館展 ルネサンス
この秋、最も大きな注目を集めている展覧会の一つが、パリのルーヴル美術館が誇る50点以上の傑作を展示する国立新美術館の特別展です。同館の著名なルネサンス・コレクションに焦点を当て、西洋美術史における重要な転換点——画家たちが中世の2次元的な信仰画から脱却し、よりヒューマニズムに満ちたアプローチへと移行していった時代——を捉えます。光と影、奥行き、そして写実的な比例を用いることで、神話や聖書の場面をより自然主義的かつ情感豊かに描くだけでなく、日常の風景や人々の姿を描き出しました。
本展の目玉は、待望の初来日を果たすレオナルド・ダ・ヴィンチの『女性の肖像』、通称『美しきフェロニエール』です。この作品において、ダ・ヴィンチは対象を静的で距離感のある姿として描くのではなく、モデルの内面に揺らめく微細な精神性を捉えています。旅、技術的革新、古典の復興、そして肖像画という4つのテーマ別セクションに分けられた本展は、世界で最も有名な芸術機関がこの変革の時代をどのように記録しているかを知るための、極めて貴重な機会となります。
場所: 国立新美術館 (Googleマップ)
会期: 2026年9月9日〜12月13日(火曜休館。ただし9月22日、11月3日、12月8日は開館。11月4日は休館)
観覧料: 前売 2,200円 | 当日 2,400円
「東京、銀座5丁目4-1」アン・ヴェロニカ・ヤンセン展
ブリュッセルを拠点に活動するアーティスト、アン・ヴェロニカ・ヤンセンが、日本で初となる個展をガラス張りの建築が象徴的な銀座メゾンエルメス フォーラムで開催。光、空気、そして微細な感覚の惑いを通じて、空間全体を鮮やかに変容させます。霧、音、投射された色彩、工業用資材などのエレメントを用いることで、ヤンセンは身体が空間、時間、形態をどのように知覚しているかを問い直す空間を創り出します。
ギャラリーの住所を直接冠した本展では、建物の構造や刻一刻と変化する光のコンディションとの対話によって構想された約10点の作品を展示。「Rose」(2007年)は濃い霧の中に光線を投影することで、堅固で輝く光の彫刻のような錯覚を生み出します。また、懸吊されたシートに熱反応フィルムを施した「Swings」(2000〜2023年)、光を反射する微粒子がフロア上に虹色の水たまりを描く「Untitled (blue glitter)」、本展のために制作された新作「Donut」などが展示されます。
場所: 銀座メゾンエルメス フォーラム (Googleマップ)
会期: 2026年9月11日〜2027年1月11日(水曜休館)
観覧料: 無料
ジグセン・リュウ「Stellar Axis」
インターネット、スマートシティ、そしてAIの急速な台頭を目撃してきたデジタルネイティブ世代として、中国人アーティストのジグセン・リュウは、技術の加速がいかに人間の知覚を再構築しているかを問いかける表現を追求しています。彫刻と絵画の双方のバックグラウンドを融合させ、リュウは原宿の会場へ、キュービズム的であり、表現主義的であり、同時にサイケデリックでもある大画面の新作9点を持ち込みます。
彼の日本初個展となる本展は、空想的でエーテルに満ちた「コズミック・ペインティングと、彼の代名詞である「ダブルサイド・ペインティング」という2つの明確なアプローチ軸で展開されます。後者は、重なり合うグラデーションの筆致によって構図の一貫性を保ちつつ、不気味で流動的な奥行き感を構築。展示作品全体を通して神話的イメージ、自然の風景、そして現代的なモチーフが衝突し、まるで星座図を解読するかのように、鑑賞者にその意味の解読を促します。
場所: NANZUKA UNDERGROUND (Googleマップ)
会期: 2026年8月29日〜9月26日(日曜・月曜休廊)
観覧料: 無料
多田美波―光、凛と ゆれる
日本の戦後抽象美術の先駆者である多田美波(1924〜2014)は、彫刻は重厚で静的であり、伝統的なギャラリー空間に縛られるべきであるという概念に約70年にわたって挑み続けました。1960年代の日本の急速な高度経済成長を受容し、多田はステンレス、アクリル、ガラスといった工業資材を使用——硬質な記念碑を作るためではなく、周囲の環境を反射、屈折させ、再構築する「光」そのものを素材として扱ったのです。彼女の作品は、帝国ホテル 東京やリーガロイヤルホテル大阪などの建築空間で見ることができます。
この包括的な回顧展では、初期の絵画から代表的な「光の彫刻」、そして建築的インスタレーションまで、彼女の広範なキャリアにわたる約70点の作品が集結します。ファインアート、プロダクトデザイン、そして都市建築をいかに架橋し、日本全国のパブリックスペースに美をもたらしたかを浮き彫りにする、デザインファン必見の回顧展です。
場所: 東京都現代美術館 (Googleマップ)
会期: 2026年8月29日〜12月6日(月曜休館。ただし9月21日、10月12日、11月23日は開館。9月22日、10月13日、11月24日は休館)
観覧料: 1,600円
共時的星叢──時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし
東京都現代美術館を訪れた際にもう一つ見逃せないのが、1930年代の台湾アヴァンギャルドを総括するこの展覧会です。映画監督のホアン・ヤーリーをゲストキュレーターに迎えた本展は、日本と台湾が共有した文化的モダニティを再評価します。植民地時代のモダニズム詩人たちが日本語でシュルレアリスム詩を綴った前衛詩人集団を追った彼の絶賛ドキュメンタリー映画『日曜日の散歩者』(2015年)を拡張し、映画の思索とスタイルをそのままギャラリー空間へと翻訳しています。美術、文学、映画、音楽、演劇が融合し、異文化交流の様々なモードを描き出します。
台南市美術館や国立台湾美術館をはじめとする主要機関から集められた約200点の台湾アート作品、100点の同時代の日本作品、そして500点以上の貴重なアーカイブ資料を一堂に展示。陳澄波、黄土水、林玉山といった台湾近代美術の礎を築いた巨匠たちの作品が日本の同時代の作家たちと並んで展示され、アジアのモダニズムがどのように創造的な対話を通じて形作られたのかについて、新鮮で中心化されない視点を提供してくれます。
場所: 東京都現代美術館 (Googleマップ)
会期: 2026年9月5日〜12月13日(月曜休館。ただし9月21日、10月12日、11月23日は開館。9月22日、10月13日、11月24日は休館)
観覧料: 2,000円

ナイジェル・クック『The Island』(2026年) © Nigel Cooke
ナイジェル・クック「Night Ruins」
具象とエレメンタルな抽象の情緒あふれる融合で知られるイギリスの画家、ナイジェル・クックが、日本初個展のためにヴェネツィアの夜の風景を描いたシリーズを東京で初公開します。クックが最近滞在したヴェネツィアの歴史あるクエリーニ・スタンパリア財団でのレジデンス期間中に制作された、小規模ながら極めて詩的な大気を孕んだ作品群を堪能できます。彼はそこで、水上の都市が放つ光、石、そして水の独特のコンポジションに没頭しました。
絵画は古典的なヴェネツィアの景観を描くのではなく、繰り返される形態、石のプラットフォーム、そして暗いラグーンの中に溶け込み、あるいはそこから現れ出るかのような有機的形態で満たされた舞台のような空間を提示します。ティントレットの流動的な筆致やジョヴァンニ・ベッリーニの劇場性といったルネサンス画家からインスピレーションを受け、クックは各キャンバスを自身の制作プロセスへの窓のように扱い、人物、動物、そして抽象的なラインワークをレイヤー状に重ね合わせています。ヴェネツィア・シリーズに添えられるのは、スペインのフォルメンテーラ島で制作された豊かで不透明な水彩画コレクションです。ここで使用されている絵の具には本物の海水が混ぜ込まれており、クックの抽象表現を文字通り地中海の環境へと直接結びつけています。
場所: Paceギャラリー (Googleマップ)
会期: 2026年8月28日〜10月10日(日曜・月曜休廊)
観覧料: 無料
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画像提供:ギャルリーためなが
荻須高徳とモーリス・ユトリロ―魅せられし街並み―
東京が西洋美術の世界的ハブとなる以前から、西洋と日本の架け橋として先駆的な役割を果たしてきた「ギャルリーためなが」は、20世紀の2人の巨匠——在仏日本人画家の荻須高徳とフランス人画家のモーリス・ユトリロ——と深い絆を築いてきました。創業者である爲永清司は荻須と30年におよぶ親交を結び、1967年には日本初となるユトリロの大回顧展の実現に尽力しました。こうした歴史的背景を受け、ギャラリーは両画家の作品を讃える特別な合同回顧展を開催します。
25点の油彩画を集めた本展は、2人の洋画家がヨーロッパ各地の街並みのありのままの美しさと抒情——モンマルトルの風が吹き抜ける路地、ヴェネツィアの運河に揺らめく光など——を描き出すことに捧げた画業の軌跡を辿ります。重厚な質感と移ろいゆく季節への鋭い感性を備えた展示は、荻須の地に足のついた視線とユトリロの詩的なノスタルジーを対置させ、同時代を生きた2人の視覚世界を提示してくれます。
場所: ギャルリーためなが東京 (Googleマップ)
会期: 2026年9月5日〜27日
観覧料: 無料
モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 ― モネと21世紀のアート
東京から電車で約2時間、箱根の深い森の中に位置するポーラ美術館の現在開催中の展覧会は、都市を離れてアートを楽しむ日帰り旅に最高の選択肢です。クロード・モネの没後100年と開館25周年というダブルの節目を記念し、同館が誇るアジア最大級のモネの油彩画コレクションから19点と、世界各地の現代アーティスト18名による作品を一堂に展示しています。
初期の川辺の風景やヴェネツィアの水景から、最晩年の『睡蓮』に至るモネのキャリアを網羅し、光、運動、そして視点に対するモネの革新的なアプローチを追跡。カメラのズームや上空からの俯瞰、変容する時間性を先取りしたかのような彼の力強く映像的な構図が、ロニ・ホーン、ヴォルフガング・ティルマンス、ピエール・ユイグ、中谷芙二子といったアーティストによる現代のインスタレーション、写真、彫刻とダイナミックに響き合います。19世紀の印象派と現代における生態系や知覚への思索を架橋する本展は、モネの視線がいかに時代を超えて生き続け、進化を遂げているかを見事に見せてくれます。
場所: ポーラ美術館 (Googleマップ)
会期: 2026年6月17日〜2027年4月7日
観覧料: 2,200円
この記事は、Eugenie Shinによる英語の原文を翻訳・編集したものです。